生産者紹介

紀州の農業を支えていただいている生産者の皆さまをご紹介いたします。

【柑橘】日高川町 藏光 俊輔(くらみつ しゅんすけ)さん/綾子(あやこ)さん

  • 20131018元気と笑顔を 川辺 藏光俊輔・綾子DSC_0110

和歌山県エコファーマー認定者
「安心して食べてもらいたい!」
就農年数3年。温州みかん50a、甘夏・八朔30a、梅80aを栽培しています。

こだわり

 日高川町松瀬で温州みかん50aや甘夏・八朔30a、梅80aを栽培する藏光俊輔さんと綾子さんご夫妻。大学時代に知り合い、東京や大阪でのサラリーマン生活を経て、3年前に俊輔さんのふるさとに戻ってきました。

 農家の長男である俊輔さんは、幼い頃から農業に関心がありました。大学では農業経済学を専攻し、行政の農業政策が地域に与える影響を研究していましたが、農家の立場としては微妙なズレを感じていました。

 当時から、いずれは実家に戻ると考えていたものの、両親からは反対されており、都会で暮らすのが良いか、田舎で暮らすのが良いか悩んでいました。「人工物に囲まれ、季節感のない環境で生活していると息苦しく、拠り所がないと感じていました。自然に囲まれ、農産物に触れていると心が安定します」と、環境の大切さを身をもって感じ、田舎の生活を選びました。

 綾子さんは、東京生まれの大阪育ち。都会での生活が当たり前でしたが、俊輔さんと知り合った当初から、いつかはふるさとに帰ると聞いていたため、結婚後に日高川町に移り住むことに抵抗はありませんでした。

 農業を職業の選択肢の1つとして考えつつ、実家で父親の農業を手伝い始めたばかりの平成23年9月。台風12号による日高川大水害が発生し、堤防沿いに並ぶ収穫目前のみかん畑50a全てが浸水してしまいました。

 「地域の農業が終わってしまうのではないか」と思う程、松瀬地区一帯が甚大な被害に遭い、「農業への道が閉ざされたような気がしました」と振り返ります。

 そんな状況でも、近所の80歳を過ぎた方が平然と苗木を植え始め、リタイヤしそうだった方々が後に続く姿を見て、「私たちも農業をしよう!」と、意志が固まりました。その後、友人の助けを借り、半年かけて重機で畑の泥をかき出し、本格的に農業経営をスタートさせました。

 3回目となるみかんの収穫。今年は、夏の高温と乾燥で糖度が高く、例年以上に美味しく育ちました。

 高校時代、得意だったものの「何の役に立つのか」と思いながら勉強していた生物の知識が、今役立っています。しかし、その年ごとに天候が違うこともあり、自分がやったことが直接結果に繋がっているのか、何が良かったのかがはっきり分からず、農業の難しさを痛感しています。

 幼い頃から、「こだわり」を持って農業に取り組む父親の姿に憧れ、父と同様に俊輔さんと綾子さんも農業に対して強いこだわりがあります。

 「使用基準内の農薬も、本当に全ての人に安全なのか?」という疑問を持ち、「お客様には外観よりも、安心して美味しく食べてもらいたい!」という想いがあります。

 除草剤や見た目をきれいにするためだけの農薬は使わず、農薬は慣行比で7割減らすなど、特別栽培基準よりもさらに少ない量で栽培し、「安全・安心」にこだわって「減農薬栽培」に取り組んでいます。

 また、堆肥等による土づくりを基本に、化学農薬と化学肥料を減らす努力をする「環境にやさしい農業」への栽培計画を作成し、「和歌山県エコファーマー」として知事の認定を受けています。

 昨年、減農薬を大幅に進めてみたところ、残念ながら一部で病気が発症しました。それでも、「10年くらいは試行錯誤しながら、減農薬でもきれいで美味しいみかんを育てたい!」と、チャレンジ精神で臨んでいます。

 綾子さんも、「農業は楽しい!」と満面の笑み。2人とも、「品質の良いものが出来た時がうれしい」と、農業にやり甲斐を感じています。

 現在、綾子さんが綴るブログ「農家の嫁修行日記」やfacebookで、日々の農作業を通して、積極的な農業経営に取り組む様子を楽しく紹介すると共に、減農薬へのこだわりと「安全・安心」を訴えています。

 「世の中、面白くないことなんてない!」が持論の俊輔さん。大学時代に活動していた海外研修生交換事業を行うNPO法人で出会った先輩の「何事に対しても前向きに、楽しくないことでさえも楽しんで取り組む姿」に感化されました。常にポジティブに、「ニーズがあれば、いつ何時でも!」と声を掛けてくれたことに対しては、とにかく何でも引き受けることにしています。

 今年、青年部からの誘いを受け、ためらうことなく加入しました。ちょうど、理解者となる同年代の農業者がいないか探していた時期で、これからの農業について語り合える仲間と出会うことが出来、「もっと早く入っておけば良かった」と話します。

 「余力も、可能性もある」と感じている俊輔さんと綾子さん。今後はみかんの面積を2倍に、さらに「5年後には法人化を進めたい。社員を雇って、10ha規模の農業経営をしたい」と、明確な目標に向かって二人三脚で邁進しています。

                                       (2013年10月)



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